慢性の痛みに悩まされている人にとって、薬だけでは効果が持続しない、手術は怖い、物理療法は時間がかかる--そんなジレンマを抱えている人は意外と多い。そんなときに登場するのが、神経ブロックとラジオ波焼灼術(RFA)という二つの介入的治療法だ。どちらも針を使って神経に直接アプローチする微创(微创)治療だが、目的や効果の持続期間は大きく違う。どちらが自分に合っているのか、正しく理解することが、痛みからの解放への第一歩になる。
神経ブロックとは?一時的な痛みの遮断
神経ブロックは、局所麻酔薬や抗炎症薬を、痛みを伝えている神経の近くに注射して、一時的に痛みの信号を遮断する方法だ。例えば、腰の関節が原因で痛む場合、その関節を支配する神経(中枝)に薬を注射する。注射後、30分~1時間で痛みが和らぎ、効果は数時間から数週間続く。これは「診断的ブロック」として使われることも多い。つまり、「この神経が痛みの原因なのか?」を確認するためのテストだ。
このテストが成功するには、痛みが50~80%以上軽減することが必要だ。もし注射しても痛みがほとんど変わらないなら、その神経は痛みの原因ではない可能性が高い。逆に、劇的に楽になれば、その神経が悪さをしていると確信できる。この段階を飛ばしてラジオ波焼灼術をやってしまうと、無駄な治療になるリスクが高い。日本の病院でも、この診断的ステップは標準的なガイドラインになっている。
ラジオ波焼灼術(RFA):神経を「休ませる」治療
ラジオ波焼灼術は、神経ブロックの次のステップだ。診断的ブロックで効果があった人だけが対象になる。この治療では、針を神経の近くに正確に挿入し、電気エネルギー(ラジオ波)で神経を約80~90℃に加熱する。熱によって神経の一部が壊死し、痛みの信号を送る能力が一時的に失われる。
ここで重要なのは、「神経を切断する」わけではないことだ。神経は再生する能力がある。熱で傷ついた部分は、数カ月後に徐々に回復する。その間に、痛みが大幅に軽減する。効果の持続期間は、個人差があるが、一般的に6か月~2年とされる。腰の関節痛では70~80%の人が50%以上の痛み軽減を実感し、70%以上が鎮痛薬の使用を減らすことができたというデータもある。
治療自体は20~45分で終わる。全身麻酔は不要で、軽い鎮静剤でリラックスしながら受けられる。針の位置はX線(フロロスコピー)でリアルタイムに確認するので、誤った場所に熱を加えることはほとんどない。専門医が行えば、合併症のリスクは非常に低い。
神経ブロックとRFAの違いを表で比較
| 項目 | 神経ブロック | ラジオ波焼灼術(RFA) |
|---|---|---|
| 目的 | 痛みの診断・一時的緩和 | 長期的な痛みの遮断 |
| 使用する薬 | 局所麻酔薬、ステロイド | ラジオ波エネルギー(薬は使わない) |
| 効果の持続期間 | 数時間~数週間 | 6か月~2年 |
| 治療時間 | 10~20分 | 20~45分 |
| 麻酔 | 局所麻酔 | 軽い鎮静+局所麻酔 |
| 回復期間 | 当日から通常の生活可能 | 24~48時間で通常の活動可能 |
| 適応条件 | 痛みの原因を確認するため | 診断的ブロックで効果があった人 |
なぜRFAが選ばれるのか?実際のメリット
RFAの最大の魅力は、「薬に頼らず」「手術を避ける」ことができる点だ。鎮痛薬は胃や腎臓に負担をかけ、依存のリスクもある。手術は入院が必要で、回復に数ヶ月かかる。RFAはその中間的な選択肢として、多くの患者に支持されている。
特に膝の関節炎で悩んでいる人にとって、RFAは画期的な選択肢だ。従来のステロイド注射は3か月で効果が薄れるが、冷却式RFAでは6か月後に65%の患者が痛みの軽減を維持したという研究結果がある。これは、従来の注射の2倍以上の効果だ。
また、費用面でも有利だ。RFAの費用は1回あたり30万~50万円程度。一方、脊髄刺激装置の埋め込みは200万円以上かかる。RFAは繰り返しできるので、長期的に見るとコストパフォーマンスが高い。
誰に効く?誰には向かない?
RFAは、すべての慢性痛に効くわけではない。効果が高いのは、次の条件に当てはまる人だ:
- 腰や首、膝の痛みが数カ月以上続いている
- 薬や理学療法で改善しない
- 診断的神経ブロックで50%以上の痛み軽減があった
- 年齢が45~65歳(特に腰の関節痛に多い)
- 手術を避けたい、またはリスクが高すぎる
一方で、RFAは向かないケースもある:
- 神経ブロックで効果がなかった人
- 感染症や出血障害がある人
- 妊娠中の人
- 痛みの原因ががんや脊椎の変形など、根本的な構造異常にある人
「RFAは痛みの原因を治す治療ではない」という点を理解することがとても重要だ。関節炎や椎間板の変性は、RFAで消えない。でも、その痛みを伝える神経を一時的に「休ませる」ことで、日常生活を取り戻せる。薬に頼らず、動ける体を取り戻す--それがRFAの本当の価値だ。
治療後の注意点とよくある疑問
治療直後は、注射した場所が少し痛んだり、腫れたりすることがある。これは正常な反応で、通常3~7日で治まる。痛みが完全に軽減するまでには、2~4週間かかることが多い。すぐに「効かない」と諦めないでほしい。
稀に、神経が一時的に炎症を起こして、数週間痛むことがある(神経炎)。これは5~10%の人に見られるが、自然に治る。針の位置がずれた場合、効果が出ないこともあるが、X線で正確に確認すれば、そのリスクは10%以下に抑えられる。
治療後は、24時間は激しい運動や重い物を持つのを控える。翌日から散歩や軽い家事は問題ない。多くの患者が、3日以内に仕事に戻っている。
今後の展望:新しい技術と広がる応用
RFAの技術は、今も進化し続けている。従来のRFAは、熱で小さな範囲(3~4mm)の神経を焼くだけだったが、新しい「冷却式RFA」では、針の内部に冷却液を流して、より大きな範囲(8~10mm)を安全に治療できるようになった。これにより、膝の神経や仙腸関節の痛みにも、より確実に効くようになった。
さらに、熱を使わない「パルス型ラジオ波」も登場した。これは神経を壊さずに、痛みの信号を「リセット」するような働きをする。回復が早く、副作用も少ないため、今後ますます注目されている。
アメリカの研究では、RFAの導入によって、脊椎手術が15~20%減ったという報告もある。薬の使用量も減り、オピオイド依存のリスクが下がった。日本でも、2025年現在、RFAは慢性腰痛の標準的な2次的治療として、多くの病院で採用されている。
神経ブロックとラジオ波焼灼術、どちらから始めるべきですか?
必ず神経ブロックから始めます。RFAは、神経ブロックで痛みが大幅に軽減した人だけが対象です。診断が正しくないと、RFAも効果がありません。神経ブロックは、痛みの原因を特定するための「テスト」であり、RFAの前段階です。
ラジオ波焼灼術は痛いですか?
針を刺すときの痛みは、局所麻酔でほとんど感じません。熱を加えるときには、少し熱い感覚や軽い電気ショックのような感覚がすることがありますが、我慢できないほどではありません。鎮静剤を使うので、ほとんどの人がリラックスして治療を受けられます。
効果は一生続きますか?
いいえ、神経は再生するため、効果は数年で薄れます。平均で1~2年持続します。その後、再発した場合でも、再度RFAを受けることは可能です。再治療の成功率は、初回とほぼ同じレベルです。
RFAは保険適用ですか?
はい、日本では慢性腰痛、膝関節症、仙腸関節痛などの適応症に対して、RFAは保険適用されています。自己負担は3割で、1回あたり約10万円前後(医療機関によって異なります)。診断的ブロックも保険適用です。
RFAを受けるなら、どんな医師に診てもらえばいいですか?
介入的疼痛治療に特化した「疼痛管理専門医」や「麻酔科専門医」が最適です。特に、X線や超音波を使った精密な針の操作経験が豊富な医師を選ぶことが重要です。日本麻酔科学会や日本疼痛学会の認定医を確認すると安心です。
次に何をすればいい?
もし今、薬で痛みを抑えているけど、効きが悪くなってきた、または副作用が気になっているなら、神経ブロックとRFAを検討する価値がある。まずは、痛みの原因が「神経」にあるかどうかを確認するために、疼痛管理外来を受診してみよう。診断的神経ブロックは、1回で数十分、ほとんど痛みもなく受けられる。それが、あなたが再び動ける生活を取り戻すきっかけになるかもしれない。