抗生物質の適切な使用チェッククイズ
抗生物質の乱用が耐性菌の増加につながる重要な事実を確認しましょう。5問のクイズで、適切な知識を持っているかチェックしてください。
耐性菌は、もはや未来の脅威ではありません。今、私たちの身の回りで、日常の治療が効かなくなりつつあります。風邪の後に出された抗生物質、歯の痛みで飲んだ薬、手術後の予防投与……これらが、あなたの体の中で、あるいは地域の病院で、死に至る可能性のある「薬が効かない細菌」を育てているのです。
なぜ抗生物質を飲むと耐性菌が生まれるのか
抗生物質は、細菌を殺す薬です。でも、細菌は生き物です。たった一つの細菌が偶然、薬の効かない変異を起こせば、その子孫は薬に負けず、どんどん増えていきます。抗生物質を頻繁に、長く、必要以上に使うと、この「生き残った細菌」が優勢になるのです。これは進化です。薬が「選択圧」となって、耐性を持つ細菌だけを残すのです。特に問題なのは、NDM-CREという耐性菌です。これは、最も強力な抗生物質であるカルバペネムにも効かない腸内細菌です。米国CDCのデータでは、2019年から2023年の間にNDM-CREの感染は460%も増加しました。この菌による血液感染の致死率は40~50%。治療薬がほとんどないため、患者は「何を試しても効かない」という状況に陥ります。
誰が一番影響を受けるのか
耐性菌の影響は、誰にでも平等に降りかかります。しかし、特にリスクが高いのは、慢性的な病気を持つ人、高齢者、手術や化学療法を受けた人です。ある Johns Hopkins の看護師は、20代の囊胞性線維症の患者の話を語りました。この患者は、耐性が極めて強い緑膿菌に感染し、18ヶ月間、点滴抗生物質を続けました。治療は失敗を繰り返し、医療費は120万ドルを超えました。普通の感染なら数日で治るところを、何年も闘わなければならなかったのです。
また、膝の置換手術後にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に感染したという患者の声もあります。11種類の抗生物質を試し、3回の再手術を経て、やっと回復しました。彼女は言いました。「治療が効かないかもしれないという不安が、痛みより辛かった。」
耐性菌は、薬だけが原因ではない
抗生物質の乱用が主な原因だと考えがちですが、実はそれだけではありません。2025年1月に発表されたNature Communicationsの研究では、抗生物質ではない通常の薬--例えば降圧薬や抗うつ薬--も、細菌の耐性を促進する可能性があることが示されました。これは、私たちが「薬=安全」と思い込んでいる部分に、大きな盲点があることを意味します。さらに、世界中で57%の抗生物質が処方箋なしで購入されています。東南アジアの一部では、89%の人が自分で薬を手に入れ、症状が軽いだけで飲んでいます。これは、耐性菌を世界中に広げる火種です。
病院は対策を取っているのか
はい、取っています。しかし、十分ではありません。米国CDCは、病院での抗生物質の適正使用を促す「核心的要素」を7つ定めています。リーダーシップのコミットメント、薬剤師の関与、耐性菌のデータ追跡、医師へのフィードバック、教育などです。これらの対策を完全に導入した病院では、不適切な抗生物質使用が22%減り、C. difficile(クロストリジオイデス・ディフィシル)感染も17%減少しました。
しかし、問題は、日本の病院の38%、米国のコミュニティ病院の62%が、耐性菌を迅速に検出する分子検査装置を持っていないことです。検査が遅れれば、正しい薬が遅れて使われ、患者の命が危険にさらされます。
新薬は開発されているのか
残念ながら、新薬の開発はほとんど止まっています。1980年代には、毎年100種類以上の新しい抗生物質が市場に出ましたが、2024年現在、臨床開発段階にあるのはわずか39種。そのうち、新しい作用機序を持つ「新規クラス」はたった8種です。製薬会社は、抗生物質の開発をやめています。なぜなら、儲からないからです。開発に1ドル投資しても、回収できるのは20セント。15社あった大手製薬会社のうち、7社はすでにこの分野から撤退しました。
唯一の希望は、2025年1月にFDAが認可したセフェプイム・タニボルバクタムです。これは、NDM-CREに有効な新しい薬で、臨床試験では89.3%の成功率を記録しました。しかし、これは「一発の奇跡」にすぎません。新しい薬が次々と開発されなければ、また同じ状況に戻るだけです。
世界は動き出しているのか
動きはあります。スウェーデンの「Strama」プログラムは、1995年から抗生物質の使用を28%減らし、耐性率を33%下げました。これは、医師、薬剤師、患者が一体となって、薬の使い方を見直した成果です。アメリカでは、2024年3月に「PASTEUR法」が議会に提出されました。これは、抗生物質の売上ではなく、その価値に報酬を支払う仕組みです。つまり、「たくさん売れば儲かる」ではなく、「役に立つ薬をつくれば、国が保証する」というモデルです。この制度が実現すれば、新薬の開発が300%加速する可能性があります。
あなたができること
個人が耐性菌の拡大を防ぐのは、難しいように思えますが、実はとても簡単な行動が、大きな変化を生みます。- 医師が抗生物質を勧めても、「本当に必要ですか?」と聞く。風邪やインフルエンザには効かないことを知る。
- 処方された分を全部飲み切る。症状が良くなったからといって、途中でやめない。
- 自分や家族の薬を他人に渡さない。処方薬は個人専用。
- 動物の飼育や農業で使われる抗生物質の問題にも目を向ける。畜産業での過剰使用は、耐性菌を人間へ伝える主要なルートです。
耐性菌は、あなたの体だけの問題ではありません。あなたの行動が、隣の人の命を救うこともあります。逆に、軽い気持ちで薬を飲むことが、誰かの治療を不可能にするかもしれません。
未来は、今決まる
WHOは、耐性菌が2050年までにがんを上回る年間1,000万人の死を引き起こすと警告しています。OECDは、2035年までに「最後の砦」であるカルバペネムへの耐性が2倍になると予測しています。しかし、この未来は避けられません。私たち一人一人が、薬の使い方を見直し、医療者と協力し、政策に声を上げれば、この流れを変えることができます。耐性菌は、誰かのせいではありません。私たちの選択の積み重ねです。
次に、風邪で病院に行ったとき。医師が「抗生物質を出しますか?」と尋ねたら。あなたは、どう答えますか?
抗生物質は風邪に効きますか?
いいえ、効きません。風邪はウイルスが原因で、抗生物質は細菌にしか効きません。風邪に抗生物質を飲んでも、症状は改善しません。むしろ、耐性菌を育てるだけです。医師が勧めても、必ず「なぜ必要なのか?」と確認してください。
抗生物質を途中でやめても大丈夫ですか?
やめないでください。症状が良くなったからといって、細菌が全滅したわけではありません。残った細菌は、薬に強いタイプです。それを放置すると、次に同じ薬を飲んでも効かなくなります。処方された分は、必ず最後まで飲み切ることが、耐性菌を防ぐ最短の道です。
耐性菌に感染したら、もう治せませんか?
完全に治せないわけではありませんが、治療は非常に困難になります。NDM-CREやC. aurisのような「超耐性菌」では、使える薬が限られ、副作用が強く、治療期間が長くなります。入院日数は通常の3倍以上になることもあり、命を落とすリスクも高くなります。予防が、唯一の確実な方法です。
子どもに抗生物質を多く飲ませても大丈夫ですか?
子どもは、大人より耐性菌の影響を受けやすいです。特に、生後1年以内の乳児に抗生物質を繰り返し与えると、腸内細菌のバランスが長期間崩れ、アレルギーや免疫疾患のリスクが高まる可能性があります。必要最低限の用量と期間で、医師とよく相談してください。
抗生物質の代わりに、ハーブやサプリメントは効きますか?
科学的に証明された代替薬はありません。ハーブやプロバイオティクスは、体の免疫力を高める可能性はありますが、細菌感染を直接治療することはできません。耐性菌に感染した場合、代替療法に頼ると、治療が遅れ、命に関わることがあります。信頼できる医療機関の診断と処方が唯一の確実な手段です。