
「塗り薬なら副作用はないでしょ?」と思いがちだけど、実はゼロではありません。とはいえ、ムピロシン(商品名:バクトロバン)で起こる反応の多くは軽くて短期間。ここでは、どんな症状が“よくある範囲”で、どこからが受診サインなのかを、実体験ベースのコツと一次情報に沿って、使う人目線でまとめます。
結論だけ先に知りたい人のために、まず要点から。
- 軽い刺激感・ヒリヒリ・かゆみ・赤みは“よくある”範囲(臨床試験で約1-5%)。数日で落ち着くことが多い。
- 広範囲・長期間の塗布は避ける。特に腎機能に不安がある人はPEG基剤の軟膏を大面積に使わない。
- 3日使って改善が乏しい、悪化する、水疱・膿・発熱が出るなら医師に連絡。
- 鼻用は米粒大を両鼻に。喉の違和感・鼻のムズムズ・頭痛は起こり得るが、強い息苦しさや顔の腫れは救急。
本記事のゴールは4つ。1) 起こりやすい副作用と“普通の反応”の見極め、2) 副作用を減らす正しい使い方、3) 危険サインと受診の目安、4) 妊娠・授乳、子ども、MRSA除菌など状況別の注意点と代替策。検索でここへ来た理由を、そのまま解決します。
何が起こる?起こりやすい副作用と“普通の反応”の見方
まず前提。ムピロシンは黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌に強い外用抗菌薬。日本でも皮膚の細菌感染(とびひ、毛包炎、小さな傷の二次感染)や、鼻腔のMRSA保菌除菌に使われています。添付文書(PMDA)やFDAラベルでは、次のような副作用が報告されています。
- 局所(皮膚):ヒリヒリ・灼熱感、かゆみ、赤み、乾燥、圧痛(多くは約1-5%)。
- アレルギー関連:接触皮膚炎、蕁麻疹、極めてまれに全身性の即時型反応(顔や喉の腫れ、呼吸困難)。
- 鼻用:鼻の刺激感、ムズムズ、くしゃみ、喉の違和感、軽い頭痛、味覚の違和感(おおむね軽度で一過性)。
これらのうち、塗布後すぐの軽いヒリヒリや赤みは“普通の範囲”に入ることが多いです。皮膚が荒れている部位ほどしみる感じは出やすく、2~3回目の使用でおさまるケースがよくあります。鼻用も同じで、塗布後に一時的にムズムズして鼻をかみたくなる感じはよくあります。
時間軸の目安も押さえておきましょう。
- 塗布直後~数分:しみる・温かい感じ。数分~30分で引いてくるなら多くは許容範囲。
- 数時間~1日:軽い赤みやかゆみ。保湿や塗布量調整で軽くなることが多い。
- 2~3日:感染そのものが引き始め、痛みや膿が減ってくるのが一般的。変化が乏しい、むしろ悪化するなら要相談。
気をつけたいのは“接触皮膚炎”(アレルギー性のかぶれ)。塗った部位の周囲まで広がる赤み、強いかゆみ、小水疱、輪郭がくっきりした炎症が出てきたら、単なる刺激ではなくアレルギーが疑われます。中止して医師へ。
基剤にも注目。皮膚用の一部製剤はポリエチレングリコール(PEG)基剤で、広範囲・長期・傷の深い部位に使うとPEGが吸収されやすくなります。腎機能に課題がある人は特に注意。鼻用製剤は白色ワセリン系で、皮膚用とは中身が違います。
数値の目安については、PMDA添付文書やFDAラベルで局所刺激症状は1-5%程度、アレルギー性皮膚炎は稀とされています。イギリスのNICEの一次医療向けコンテンツ(Impetigo)でも、ムピロシンは短期使用での安全性が高いとされています。
大事なキーワードをここでひとつだけ。検索意図にフィットするよう太字で示します:ムピロシン 副作用。
副作用を減らす正しい使い方:手順・量・組み合わせのコツ
むやみに我慢するより、そもそも副作用を起こしにくい塗り方を身につけるのが早道。ここは手順重視で。
皮膚に使うときの基本手順
- 洗う:ぬるま湯でやさしく洗い、清潔なタオルでそっと水気を取る。
- 量:病変部が薄く光る程度。直径1cmのキズなら米粒〜小豆大。塗りすぎは刺激とにじみの原因。
- 塗り方:外側から内側へ軽く伸ばす。こすり込まない。えぐれたキズや広範囲は医師の指示がない限り避ける。
- 覆い方:衣類と擦れるならガーゼで軽く保護。密封(サランラップのような完全閉鎖)は医師が指示したときだけ。
- 頻度:通常は1日2~3回(処方指示優先)。塗り忘れたら気づいたときに。次回ぶんを重ねて倍にしない。
- 期間:目安は5~10日。治っても自己判断で長々と続けない。指示があるときは完了まで。
鼻(MRSA除菌など)に使うとき
- 量:片鼻に米粒大。綿棒の先1cmにのるくらい。
- 入れ方:鼻の入り口(前庭)にだけ。奥まで突っ込まない。
- 広げ方:軽く鼻翼をつまんで数回こする。これで全体に行き渡る。
- 頻度と期間:1日2回を5日間、などのプロトコルが一般的(指示に従う)。
刺激を減らすちょい技
- 先に保湿:周辺の乾燥が強いとしみやすい。感染部位の周りだけワセリンで薄く保護すると楽になることがある(ただし患部そのものに重ねると効果が落ちるので注意)。
- 重ね塗りは間隔を:ステロイドや保湿剤と併用指示がある場合は、どちらかを先に塗り、15~30分あけてもう一方を。一般には抗菌薬→ステロイドの順が多いが、医師の指示を優先。
- こすらない洗い方:泡で押し洗い→ぬるま湯で流す→タオルでポンポン。摩擦は炎症を長引かせる。
- 日焼け対策:赤みが強い時期は紫外線で悪化しやすい。外出時は患部を布で覆うか、周囲に日焼け止め。
やりがちなNG
- 目の周り・眼内に入れる:眼科領域用ではありません。入ったら水でよく洗って、しみが強ければ眼科へ。
- 広範囲にベタ塗り:治りが遅くなるうえ、基剤による刺激・吸収の問題が出やすい。
- 自己判断で長期連用:耐性菌を増やす遠回り。良くなったら終了、再燃は受診。
- 他の軟膏と混ぜる:効果が薄まることがある。混ぜるなら必ず医療者の指示で。
保存と期限
- 室温で保管、直射日光・高温は避ける。
- チューブ先端は清潔に。先を患部に触れさせない。
- 開封後は長期保管しない(季節をまたいで“残りを再利用”は避ける)。

危険サインと受診の目安:迷ったらこの順で判断
迷ったときは、次のチェックで安全側に倒しましょう。副作用や感染悪化の見逃しを減らせます。
今すぐ使用中止+救急(迷ったら119)
- 顔や唇、喉の急な腫れ、ゼーゼー、息苦しさ、じんましんが全身に拡がる。
- 塗布直後に強いめまい、意識が遠のく感じ。
- 目に入って激しい痛みや視力の異常が続く。
当日~翌日に医療機関へ連絡(原則中止して受診)
- 塗った部位の周縁まで広がる赤み・小水疱・強いかゆみ(接触皮膚炎が疑わしい)。
- 痛みや腫れがむしろ増えている、発熱が出た、赤い線が伸びるように広がる。
- 鼻用で、持続する頭痛・鼻血・強い喉の違和感や粘膜のただれ。
3日ルール(軽症なら一旦ここを基準に)
- 48-72時間使っても改善が乏しい、または悪化→受診。培養や治療変更(他の抗菌薬、時に全身薬)が必要かもしれません。
意思決定ミニフローチャート
- 軽いヒリヒリのみ→量を少し減らす、周辺保湿、次回も同じか軽ければ継続。
- ヒリヒリ+赤みが広がる→中止して医師相談。写真を撮っておくと診断が速い。
- 膿や痛みが減らない→3日を待たずに相談。耐性や別の原因(真菌、ヘルペス、湿疹の増悪)を考える。
- 鼻用でムズムズのみ→塗布量を米粒大まで減らす。強い症状に変わったら中止し連絡。
薬の相性・基礎疾患のポイント
- 腎機能障害:PEG基剤の軟膏を広範囲・長期に使わない(添付文書の注意)。
- 広範な熱傷や大きな創傷:吸収が増える。専門診療へ。
- 耐性対策:必要な部位に、必要な期間だけ。とびひ全体に漫然ベタ塗りはNG(日本皮膚科学会の指針でも、適切な範囲の治療を推奨)。
状況別の注意点・代替策・ミニFAQ(妊娠/授乳・子ども・MRSA除菌など)
同じ薬でも、使う人・場面で注意点は少し変わります。ここは“あるある”をまとめて一気に解消します。
妊娠中
- 外用での全身吸収はごくわずか。各国の公的資料でも、必要時の短期使用は概ね許容されています(PMDA添付文書、FDAラベル)。
- 広範囲や長期連用は避ける、目の周りは使わない、といった基本はより丁寧に。
授乳中
- 母乳への移行は臨床的に問題になりにくいとされています(LactMed 2024更新の要旨)。
- 乳頭に使用する場合は、授乳直前に拭き取る/洗い流す。赤ちゃんの口に入らないよう短期間で。
子ども
- とびひで処方されることが多い薬。塗りすぎや密封はトラブルの元。ガーゼで軽く保護が基本。
- 指しゃぶりや掻きこわしがあると再発しやすい。爪を短く、手洗いを習慣に。
高齢者
- 皮膚が薄く乾燥していると刺激を感じやすい。量はより薄く、周囲の保湿を意識。
- 腎機能に不安があれば広い面積は避け、回数も医師と調整。
アトピーや湿疹の上に感染が重なったとき
- 抗菌薬とステロイドの併用が処方されることがある。先に抗菌薬を患部へ、周辺の炎症にはステロイド、という分け方が実用的。
- 自己判断での同時併用は避ける。医師の指示がベスト。
MRSA除菌(鼻腔)
- 一般的なプロトコルは1日2回×5日。家族内で同時に行う指示が出ることも。
- 鼻の乾燥やムズムズはよくある。出血や強い頭痛、息苦しさは中止して受診。
代替策(ムピロシンが合わない/効かないとき)
- 別の外用抗菌薬:日本ではニューキノロン系(ナジフロキサシン、オフロキサシン)やアミノグリコシド系(ゲンタマイシン)などが選択肢。病原体や部位で使い分け。
- 消毒薬では治らないことが多い:とびひ等は抗菌薬が基本。アルコールや刺激性の強い消毒はかえって悪化することも。
- 全身抗菌薬:広がっている、発熱がある、顔面などリスク部位、基礎疾患ありでは内服に切り替えることがある。
- 非細菌の可能性:真菌感染(みずむし様)、ヘルペス、接触皮膚炎などは抗菌薬で悪化も。見た目が典型的でない、治らないなら検査へ。
ミニFAQ
- Q. 使うと少ししみます。続けていい?
A. 数分で引く軽い刺激なら様子見可。赤みが広がる/小水疱/強いかゆみが出たら中止して受診。 - Q. 保湿剤は一緒に使える?
A. 使えます。重ねるときは15~30分あけるか、患部はムピロシン、周辺は保湿で塗り分け。 - Q. 目の近くのものも塗っていい?
A. 目の中・粘膜は避ける。まぶたは医師の指示がある場合のみ、極薄く慎重に。 - Q. どれくらいで効き始める?
A. 2~3日で痛みや膿が減るのが目安。変化が乏しければ医師に相談。 - Q. 市販で買える?
A. 日本では処方薬。症状に合った薬を選ぶためにも受診が確実。
根拠・信頼できる情報源
- PMDA「バクトロバン軟膏2%」添付文書:副作用頻度、PEG基剤の注意、用法。
- FDA Drug Label(Bactroban):臨床試験の副作用(局所刺激1-5%)、鼻用での症状。
- NICE CKS(Impetigo, 2023更新):一次医療での外用抗菌薬の位置づけ、使用期間の目安。
- LactMed(2024更新):授乳時の外用抗菌薬の安全性の概観。
- 日本皮膚科学会 ガイドライン(とびひ等):適正使用と耐性対策。
次の一手/トラブルシューティング
- 今日やること:処方どおりに薄く塗る、写真で経過を残す、刺激が強ければ量を微調整。
- 明日以降:2~3日での変化をチェック。悪化サインがあれば早めに連絡。
- うまくいかない時:塗り方(量・範囲)を見直す→保湿の入れ方を調整→それでもダメなら受診。自己判断の長期化はしない。
- 再発予防:手洗い、爪ケア、タオルや枕カバーのこまめな交換、患部を触らない。
これは一般向けの解説です。あなたの症状や持病、仕事や生活環境で最適解は変わります。迷ったら写真と経過をメモして、医師や薬剤師に遠慮なく聞いてください。早めに軌道修正すれば、治りも早く、副作用のリスクも小さくできます。
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