子供の薬は、大人の薬を小さくしただけではいけません。体重、代謝、肝臓や腎臓の機能が大人と全く違うため、同じ薬でも量や形態を間違えると、命に関わるリスクになります。日本でも、小児科の外来で処方される薬の約半分は、メーカーが正式に小児向けと定めていない「オフラベル使用」です。つまり、大人のデータから推定して使っているのが現実です。だからこそ、年齢と体重に合わせた正しい薬の選び方が、親と医療従事者のどちらにも求められています。
痛みや熱には、アセトアミノフェンとイブプロフェンが基本
子供の発熱や痛みに使う薬で、最も安全で広く使われているのはアセトアミノフェンとイブプロフェンです。アスピリンは、レイ症候群という重い脳・肝臓の病気を引き起こす可能性があるため、18歳以下には絶対に使ってはいけません。
アセトアミノフェンは、体重1kgあたり4〜10mgを、4〜6時間おきに投与します。最大単回量は600mg、1日最大は75mg/kg(通常3,750mgが上限)です。たとえば、15kgの子どもには1回あたり60〜150mg、1日最大で1,125mgまでが安全範囲です。誤って1回に1,000mg以上与えると、肝臓障害のリスクが急上昇します。
イブプロフェンは、体重1kgあたり5〜10mgを6〜8時間おきに使います。最大単回量は600mg、1日最大は2,400mgです。胃の不快感や胃炎のリスクがアセトアミノフェンよりやや高いので、空腹時に与えないようにしましょう。特に2歳未満の乳児では、脱水状態のときや腎臓に問題がある場合は、医師と相談が必要です。
細菌感染には、アモキシシリンが第一選択
中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などの細菌感染で、小児科で最もよく使われる抗菌薬はアモキシシリンです。アメリカ疾病対策センター(CDC)のデータでは、小児の中耳炎の87%がこの薬で治ります。
投与量は、体重1kgあたり25〜35mgを1日3回(8時間おき)に分けます。1回の最大量は500mgです。たとえば、12kgの子どもには1回あたり300〜420mg、1日合計で900〜1,260mgが標準です。7日間の投与が一般的で、症状がよくなっても途中でやめないことが重要です。
ペニシリンアレルギーの子どもには、アズithロマイシンが使われますが、耐性菌の増加(約30〜40%)が問題です。そのため、アズithロマイシンは「最後の選択肢」として使われます。また、フロキサシン系(シプロフロキサシンなど)は、軟骨の発育に悪影響を及ぼす可能性があるため、18歳以下では原則として使われません。
年齢ごとの薬の形態は、投与の成败を決める
薬の効果は、量だけでなく「形」にも左右されます。3歳以下の子どもには、液体薬、噛める錠剤、舌で溶ける錠剤が必須です。大人用の錠剤を砕いて与えるのは、量の誤差が大きくなりすぎるので危険です。
液体薬の濃度は、年齢によって異なります。新生児(0〜28日)では、成人の1/10〜1/100の濃度が使われることがあります。これは、腎臓や肝臓の機能が未発達だからです。たとえば、抗ウイルス薬のオセルタミビル(タミフル)は、1ヶ月以上のお子さんには10mg/mLの濃度で、2歳〜7歳の子どもにはフルーツ味の液体が開発され、服用率が58%も向上しました。
一方、10歳以上になると、通常の錠剤やカプセルが使えるようになります。ただし、飲みにくい薬は、子どもが拒否して投与が続かなくなるため、味の調整や飲みやすさの設計が重要です。実際、保護者アンケートでは、42%が「正確な量を測るのが難しい」「子どもが嫌がって吐き出す」と答えています。
絶対に使ってはいけない薬、注意が必要な薬
2025年版の小児薬剤安全ガイドライン(KIDsリスト)では、特定の薬が「絶対使用禁止」または「注意が必要」と明確にされています。
- コデイン、トラマドール:呼吸抑制のリスクが高く、18歳以下では一切使用禁止。日本でも2022年に小児への使用が厳しく制限されました。
- アンジオテンシン受容体拮抗薬(サルベサルタンなど):1ヶ月未満の新生児では腎臓の異常を引き起こす可能性があるため、使用禁止。
- モンテルカスト(アレルギー薬):18歳以下では不眠や気分の変化(うつ状態、自殺念慮)のリスクが報告されているため、注意が必要です。
- モルヌピラビル:18歳以下では胎児への影響が懸念され、使用制限があります。
これらの薬は、大人では安全に使われているものでも、子どもでは体の仕組みが違うため、予期せぬ副作用が出ます。医師や薬剤師が処方するとき、必ずKIDsリストを参照しています。
投与ミスを防ぐための3つの実践的コツ
親が最も悩むのは「正確な量をどうやって測るか」です。市販のスプーンや茶碗で測ると、誤差が30%以上になることもあります。
- 薬局でついてくる専用の注射器やスプーンを使う:1mL単位で測れるものを使い、毎回洗って乾かしましょう。
- 体重を正確に測る:体重が1kg変わると、薬の量が大きく変わります。定期的な体重測定を習慣に。
- 薬の名前と量を紙に書いて貼る:「1日2回、1回1.5mL、アセトアミノフェン」と書くだけで、混乱を防げます。
また、薬を飲ませるときに「無理に飲ませない」ことも大事です。子どもが激しく抵抗すると、気道に詰まらせたり、吐いて全部出したりするリスクがあります。その場合は、薬剤師に「味を変える」や「カプセルを混ぜる」方法を相談しましょう。
小児用薬の未来:個別化とアクセスの格差
今、小児薬の開発は大きく変わっています。3Dプリンターで、子どもの体重に合わせて1粒ずつ薬を印刷する技術が臨床試験中です。また、味を改善するため、薬の表面に甘味や果物の香りをコーティングする技術も進んでいます。
しかし、問題も残っています。低所得国では、必要な小児用薬の34%しか手に入らず、日本や米国では92%が利用可能です。世界保健機関(WHO)は、2030年までにこの格差をなくす目標を掲げています。
小児の薬は、単なる「大人の縮小版」ではありません。子どもに合わせた形、量、味、使いやすさがすべて、治癒と安全を左右します。正しい知識と、専門家のサポートがあれば、ほとんどの薬は安全に使えます。
小児の熱に対して、アセトアミノフェンとイブプロフェン、どちらがいいですか?
どちらも効果は似ていますが、アセトアミノフェンは胃への影響が少なく、乳児や胃腸が弱い子どもに推奨されます。イブプロフェンは、炎症による痛みや発熱(耳の痛み、扁桃炎など)にやや効果が高いです。ただし、脱水気味の子どもや腎臓の問題がある場合は、イブプロフェンは避けてください。どちらも、体重に応じた正しい量で使うことが重要です。
液体の薬を子どもが吐き出してしまうとき、どうすればいいですか?
無理に飲ませると、誤嚥や気道への流入のリスクがあります。まずは、薬剤師に「味の調整」や「飲みやすい形態」(例:フレーバー付き、口の中で溶ける錠剤)を相談してください。また、薬を冷やしてから与えると、苦味が少なくなります。飲ませるときは、子どもを座らせた状態で、ゆっくりと少量ずつ口の奥に流し込むようにしましょう。無理なら、翌日の投与を医師に相談してください。
小児用の抗菌薬は、なぜアモキシシリンが第一選択なのですか?
アモキシシリンは、小児の細菌感染(中耳炎、副鼻腔炎、肺炎)の約80%以上に効果があり、副作用が比較的少ないからです。また、耐性菌の発生が比較的少なく、長期的にも有効性が確認されています。他の薬(例:アズithロマイシン)は、耐性菌の割合が高く、使いすぎると効かなくなるため、最後の選択肢として使われます。
子どもに薬を飲ませるときに、間違えやすい間違いは何ですか?
最もよくある間違いは、「体重を間違えること」と「液体の量を誤って測ること」です。特に、10〜20kgの子どもでは、市販のスプーンや茶碗で測ると、1回の投与量が2倍〜3倍になることがあります。また、薬の濃度(例:100mg/mL vs 250mg/mL)を間違えると、過剰投与につながります。必ず薬のパッケージに書かれた濃度を確認し、専用の注射器で測ってください。
小児用の薬は、大人の薬を半分にすればいいですか?
いいえ、絶対にやめてください。子どもは大人と比べて、薬を吸収するスピード、代謝するスピード、排出するスピードが異なります。たとえば、アセトアミノフェンは、成人では1回最大1,000mgですが、10kgの子どもでは1回60〜100mgが上限です。大人の薬を半分にしても、濃度や形態が合わず、誤用のリスクが高まります。必ず小児用の製剤と、体重に基づく投与量で使用してください。