子どもの中耳炎は、日本でもアメリカでも最もよくある小児の病気の一つです。特に6か月から2歳の間で多く見られ、3歳までに83%の子どもが少なくとも1回は経験します。耳の痛みや発熱で夜中に泣き出す、耳を引っ張る、寝られない――このような症状に親は慌てます。でも、すぐに抗生物質を飲ませる必要があるのでしょうか?チューブを入れるべきですか?それとも、様子を見たほうがいい?
中耳炎の診断は、3つの条件が揃ってこそ
中耳炎(急性中耳炎)と診断するには、単に耳が痛いだけでは不十分です。医師は必ず次の3つを確認します:
- 急に症状が現れた(急性の発症)
- 中耳に液体がたまっている(鼓膜が膨らんでいる、動かなくなっている、耳あかから膿が出ている)
- 炎症の兆候がある(鼓膜が赤く腫れている、強い耳痛)
たとえば、耳が少し赤いけど、鼓膜が動くし、子どもも元気なら、それは「中耳炎」ではなく「耳の圧力の変化」かもしれません。逆に、鼓膜がひどく膨らんでいて、3時間以上泣き続けているなら、それは「重度の症状」と判断されます。
重度の症状とは、体温が39℃以上、耳の痛みが48時間以上続く、または子どもが普段の遊びや睡眠を全くできなくなる状態です。このような場合は、すぐに抗生物質が必要です。
抗生物質は、すべての子どもに必要ではありません
かつては、中耳炎=抗生物質という固定観念がありました。しかし、最新のガイドラインでは、60~80%の子どもは自然に治るというデータが確立されています。
様子見(ウェッチフル・ウェイティング)は、以下の子どもに推奨されています:
- 6~23か月で、片耳だけが痛く、症状が軽い場合
- 24か月以上で、片耳でも両耳でも、症状が軽い場合
この場合、抗生物質は最初は処方しません。代わりに、親に「48時間様子を見て、以下のような状況になったらすぐに受診してください」という安全ネット処方を渡します:
- 耳の痛みが48時間以上続く
- 体温が39℃を超える
- 元気がなく、水分も取れない
実際、様子見を選んだ子どもでは、33%しか抗生物質を必要としません。ほとんどの子どもは、24~48時間で痛みが軽減します。ただし、以下の子どもは必ず抗生物質が必要です:
- 6か月未満の乳児(すべてのケースで治療が必要)
- 6~23か月で、両耳とも炎症がある場合(95%が抗生物質で改善)
- 耳から膿が出ている場合
- 重度の症状がある場合
第一選択の抗生物質はアモキシシリンです。体重に応じて1日あたり80~90mg/kgを投与します。2歳未満や重度の場合は10日間、2~5歳は7日間、6歳以上は5日間が標準です。アレルギーがある場合は、セフディニルやクリンダマイシンが使われます。
痛みを和らげることが、一番の治療
抗生物質の有無にかかわらず、すべての子どもに必要なのは「痛みの管理」です。しかし、驚くことに、中耳炎で痛みがある子どもの69%が、適切な鎮痛薬をもらっていません。
痛みが強いと、子どもは眠れず、食事も取れません。その結果、脱水や不安が増し、回復が遅れます。だから、痛みを取ることが、治療の第一歩です。
- アセトアミノフェン:1回あたり10~15mg/kg。4~6時間ごとに投与
- イブプロフェン:6か月以上の子どもに。1回あたり5~10mg/kg。6時間ごとに投与
これらの薬は、抗生物質とは異なり、感染を治すわけではありません。でも、子どもが寝られれば、体は自然にウイルスや細菌と戦えます。痛みが取れれば、親も安心できます。
耳管チューブは、本当に必要なのか?
耳管チューブは、鼓膜に小さなチューブを挿入して、中耳の液体を排出し、空気を入れる手術です。1年間に約66万件行われ、費用は50億ドルに達します。
チューブは、次の2つの場合にのみ推奨されます:
- 1年間に4回以上、または6か月間に3回以上の中耳炎を繰り返す
- 3か月以上、中耳に液体がたまり、聴力が40デシベル以上低下している
チューブは、最初の6か月で中耳炎の再発を半分に減らします。しかし、その後は効果が薄れます。また、チューブを入れたからといって、言語発達や学習能力が必ず向上するわけではありません。
重要なのは、「繰り返す」ことではなく、「聴力が落ちている」ことです。聴力が正常なら、チューブは必要ありません。多くの子どもが、繰り返す中耳炎でチューブを入れられていますが、実際には聴力検査がされていないケースが少なくありません。
チューブは、通常6~18か月で自然に抜けます。抜けると、鼓膜は自然に閉じます。まれに、鼓膜に穴が残ったり、瘢痕が残ったりするリスクもあります。
抗生物質の過剰使用は、耐性菌を生む
アメリカでは、年間280万件以上の耐性菌感染が、不適切な抗生物質の使用と関係しています。中耳炎は、子どもに処方される抗生物質の約3分の1を占めています。
2022年には、中耳炎への抗生物質処方率が61%まで下がりました。1995年は95%でした。これは、様子見の普及と、医師の教育が効果を上げた証拠です。
しかし、地域差はまだ大きいです。ある州では処方率が38%、別の州では82%。日本でも、地域や病院によって対応に差があります。親が「薬を出してください」と言うと、医師は「仕方なく」処方してしまうこともあります。
研究では、医師が「この子は様子見で大丈夫です。もし悪化したら、この処方箋を使ってください」と説明した場合、親の不安は減り、抗生物質の使用率は35%も下がりました。
予防は、ワクチンと生活習慣
2010年から導入された肺炎球菌ワクチン(PCV13)は、中耳炎の発生を12%、繰り返す中耳炎を20%減らしました。定期接種を受けていない子どもは、リスクが高くなります。
また、以下の生活習慣も重要です:
- タバコの煙を避ける(被动喫煙は中耳炎のリスクを2倍に)
- 哺乳瓶で寝かせない(乳児期の寝かせ飲みは中耳に液体がたまりやすい)
- 風邪をひかないように、手洗いを徹底する
抗ヒスタミン薬や鼻の薬は、中耳炎に効かないことが分かっています。むしろ、眠気や吐き気を引き起こす可能性があります。
親がすべきこと:判断のためのチェックリスト
子どもが耳痛を訴えたとき、親が確認すべき5つのポイント:
- 発熱はありますか?39℃以上なら、すぐに受診
- 耳の痛みは48時間以上続いていますか?続いているなら、安全ネット処方箋を確認
- 片耳だけですか?両耳なら、2歳以下ならすぐに治療が必要
- 耳から膿が出ていますか?出ているなら、抗生物質が必要
- 以前に3回以上中耳炎を繰り返していますか?繰り返すなら、聴力検査を受けるべき
医師と話すときは、「この子は様子見できますか?」と聞くのではなく、「この症状は重度ですか?」「聴力は大丈夫ですか?」と具体的に質問しましょう。
中耳炎の子どもに抗生物質は必ず必要ですか?
いいえ、必ず必要ではありません。6か月以上の子どもで、症状が軽く、片耳だけの場合は、様子見が推奨されます。実際、60~80%の子どもは自然に治ります。ただし、2歳未満で両耳が炎症している場合や、高熱・強い痛み・耳から膿が出ている場合は、抗生物質が必要です。
耳管チューブを入れると、耳の感染は完全に防げますか?
いいえ、完全に防げません。チューブは、最初の6か月で再発を半分に減らしますが、その後は効果が薄れます。また、チューブは自然に抜けます。重要なのは、繰り返す中耳炎だけでなく、聴力が低下しているかどうかです。聴力が正常なら、チューブは必要ありません。
抗生物質を飲ませない場合、耳に後遺症が残りますか?
様子見をしても、後遺症が残ることは稀です。研究では、抗生物質を飲まなかった子どもでも、1か月後に聴力や言語発達に差がありません。ただし、痛みがひどく、発熱が長く続くと、鼓膜に穴が開く可能性があります。そのため、48時間以上改善しない場合は、必ず受診してください。
子どもが耳を引っ張るだけで、中耳炎と判断できますか?
いいえ、耳を引っ張るだけでは判断できません。多くの子どもは、耳のかゆみや、歯が生える痛み、風邪の影響で耳を触ります。中耳炎の診断には、鼓膜の状態(膨らみ、色、動き)と、全身症状(発熱、痛みの持続)を医師が確認する必要があります。
中耳炎の予防に、鼻水を吸うことが効果がありますか?
鼻水を吸うことは、一時的に呼吸を楽にするかもしれませんが、中耳炎の予防には効果がありません。むしろ、抗ヒスタミン薬や鼻の薬は、中耳炎のリスクを高める可能性があります。大切なのは、手洗い、タバコの煙の回避、ワクチン接種です。