新しい製品が市場に出たとき、なぜ価格が急に下がるのでしょうか?特に、ある製品が長年独占的に売られてきたあと、初めて似たような代替品が登場した瞬間、価格は一気に半分、あるいはそれ以上に下がることがあります。これは偶然ではありません。この現象には、はっきりとした経済の法則が働いています。
なぜ最初の汎用製品が価格を崩すのか
「最初の汎用製品」とは、たとえば特許が切れた薬や、長く独占されていたソフトウェアに、新しい会社が似た機能の製品を出してきたときのことです。このとき、市場は一気に変わります。なぜなら、消費者は「もっと安く手に入れられる」と気づくからです。
たとえば、20年前のiPodは399ドルで売られていました。でも、数年後には100ドル以下の代替品が次々と登場しました。Appleも価格を下げざるを得ませんでした。同じことがソフトウェアでも起きています。Oracleのデータベースは年間数十万ドルのライセンス料が必要でしたが、PostgreSQLという無料の代替品が登場した後、多くの企業が「78%のコスト削減」を実現したと報告しています。
価格が下がる理由は、競争です。独占状態では、供給側が価格を自由に決められます。でも、代替品が出てきた瞬間、消費者は「この価格で買う必要はない」と考え始めます。すると、元のメーカーは価格を下げない限り、売上が落ちます。
価格下落の具体的な数字
この現象は、医薬品業界で最もよく研究されていますが、ソフトウェアや家電でも同じパターンが見られます。
- 医薬品:最初のジェネリック薬が登場すると、6ヶ月以内に価格が平均76%下がる(米国議会予算局)
- ソフトウェア:新規参入者がSaaSモデルで登場すると、初期価格は既存製品の40〜60%低いのが普通(PwC)
- 家電:Sonyの4Kテレビが1,799ドルで発売された後、競合製品が登場して1年以内に899ドルまで下がった(Consumer Technology Association)
- クラウドデータベース:PostgreSQL互換のサービスが80%割引で提供され、12ヶ月で22%の市場シェアを獲得(Flexera, 2024)
これらの数字は偶然ではありません。すべて、価格競争が発生した瞬間に起きる現象です。
消費者が価格に敏感になる理由
なぜこんなに多くの企業が価格を下げざるを得ないのか?それは、ユーザーの考え方が変わったからです。
10年前は、「有名なメーカーの製品=信頼できる」と思われていました。でも今は、CIOの68%が「IT予算が限られている」と言っています(Gartner)。企業は、ブランド名ではなく「どれだけコストを抑えられるか」を優先しています。
さらに、多くの代替製品は、元の製品の80〜90%の機能を備えています。たとえば、PostgreSQLはOracleと比べて、データ処理速度や安定性でほとんど差がありません。違いは、ライセンス料だけ。だから、企業は「機能は同じなのに、1/5の値段で使える」と判断して乗り換えるのです。
実際、G2というソフトウェアレビューサイトでは、最初の代替製品がリリース後12ヶ月以内に平均4.5点(5点満点)を獲得し、63%のユーザーが「コスト削減で機能は損なわれていない」と評価しています。
価格下落の裏側:隠れたコスト
でも、安いからといってすべてが良いわけではありません。
最初の汎用製品は、サポート体制が弱いことがあります。たとえば、既存メーカーは24時間365日対応ですが、新参者は24時間対応でも、深夜の対応が遅いケースがあります。また、初期設定に必要な時間は、20〜30%長くなることも。多くの企業が、この「設定の手間」を専門業者に外注しています。
また、データ移行の難しさも課題です。62%の企業が、最初の移行作業を外部の専門チームに任せています。これは、コスト削減の裏で発生する「隠れた費用」です。
でも、多くの企業は「それでも価値がある」と判断します。なぜなら、初期投資は小さく、6〜9ヶ月で投資回収できるからです。そして、81%の企業が、一度導入した後も継続して使っています。
市場の流れが加速している
この価格下落のペースは、年々速くなっています。
- 2010年には、特許が切れてから最初のジェネリックが登場するまで平均18ヶ月かかっていました
- 2023年には、その期間は6ヶ月に短縮されました
これは、技術の進歩とオープンソースの普及が原因です。LinuxやApacheといった無料の基盤技術を使えば、新しいソフトウェアを開発するコストが大幅に下がります。また、クラウド環境では、ソフトウェアをインストールする必要がなく、即座に試せます。
さらに、EUのデジタル市場法(2022年)によって、異なるソフトウェア間の連携が容易になり、乗り換えの障壁が40〜50%も下がりました。これにより、企業は「ちょっと試してみる」ハードルが劇的に下がっています。
今後の予測:価格競争はさらに激しくなる
今後、価格下落はさらに加速します。
- ARK Investは、2027年までにオープンソースソフトウェアが、従来のライセンス型ソフトの35%の売上を奪うと予測
- McKinseyは、競合ソフトウェア市場が2027年までに年11%成長し、従来モデルの4倍の速さで拡大すると見通し
- 78%のソフトウェア企業が、現在「使用量ベースの価格設定」を試している(PwC 2024)
つまり、これからは「一度買えばずっと使う」ではなく、「使った分だけ払う」モデルが主流になります。これにより、価格の透明性が高まり、価格競争はさらに激しくなるでしょう。
企業はどう対応すべきか
もし、あなたの会社が「高価なソフトウェア」を使っているなら、今すぐ代替品を調べるべきです。
- 「このソフトウェアの代替品は何か?」と検索する
- 「PostgreSQL」「Nextcloud」「Keycloak」「Elasticsearch」など、オープンソースの名前を覚える
- 「ライセンス料」ではなく「トータルコスト」で比較する(導入コスト、教育時間、サポートの質も含めて)
- 無料トライアルを必ず試す。多くの代替品は、機能制限なしで完全無料で使える
価格が下がるのは、消費者が選択権を取り戻した証です。あなたが「高い価格を払う必要がある」と思っている製品は、実は、すぐに安い代替品に置き換えられる可能性が高いのです。
市場は、もはや「ブランド名」で価値を決めていません。価値は「どれだけ安く、どれだけ早く、どれだけ確実に問題を解決できるか」で決まります。最初の汎用製品が登場した瞬間、その価値観が世界を変えます。