乳汁が出てきたら、妊娠してないのに?
妊娠でも授乳でもないのに、乳首から白い液体が出る。そんな経験をした女性は、意外と多い。米国メイヨークリニックの2025年2月のデータによると、女性の20~25%が人生のどこかでこの症状を経験する。この状態は「乳汁分泌(ガラクタークア)」と呼ばれ、単なる症状であり、病気そのものではない。でも、その背後には、ホルモンの乱れ、特にプロラクチンというホルモンの過剰分泌が潜んでいることがある。 プロラクチンは、脳の下垂体で作られるホルモンで、本来は出産後に母乳をつくるために働く。しかし、何らかの理由でこのホルモンが過剰に分泌されると、妊娠していない女性や男性でも乳汁が出てしまう。この状態を「高プロラクチン血症」と呼ぶ。プロラクチン値が25 ng/mLを超えると、この診断が下される。正常値は2.8~29.2 ng/mLなので、わずかに超えても注意が必要だ。 この乳汁は、通常、両方の乳房から出る(70~80%のケース)。片方だけの場合は、乳がんの可能性も否定できないため、すぐに検査が必要だ。乳汁は白く、にごったような見た目で、胸の痛みを伴わないのが特徴。血が混じったり、茶色や赤みがかった分泌物なら、それは乳汁分泌ではなく、乳がんのサインかもしれない。StatPearlsの2019年の報告では、こうした異常な分泌物の60%ががんに関連しているという。なぜプロラクチンが上がるのか?
プロラクチンが上がる原因は、さまざまだ。その中でも最もよく見られるのが、下垂体の良性腫瘍、つまり「プロラクチノーマ」だ。この腫瘍は、プロラクチンを過剰に分泌する。腫瘍が10mm以下の小さなものは「微小プロラクチノーマ」と呼ばれ、80%以上がこのタイプ。大きな腫瘍になると、視野の異常や頭痛などの神経症状も出る。 でも、腫瘍が原因じゃないケースも多い。薬が原因でプロラクチンが上がる場合もある。抗うつ薬のセトロプラミン(ゾロフト)や、胃薬のレベプラゾール、一部の降圧薬がその例だ。ストレスや睡眠不足、乳首の刺激(過度なマッサージやブラジャーの摩擦)でも、一時的にプロラクチン値は上昇する。血液検査の採血の仕方によっても、10~20 ng/mLほど値が上がることがある。だから、値が少し高めでも、すぐに薬を始める必要はない。再検査で確認する必要がある。 さらに、甲状腺の機能が低下している(バセドウ病ではない低甲状腺機能)場合も、プロラクチンが上がる。腎臓の機能が落ちていると、プロラクチンを体外に排出できず、値が高くなることもある。そして、35%のケースでは、原因がまったく分からない。「特発性」と呼ばれるこのタイプは、自然に治ることもある。不妊の原因になることもある
プロラクチンが高くなると、卵巣の働きが鈍る。卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑えられ、排卵が起こらなくなる。その結果、月経が止まったり、不規則になったりする。これを「無月経」や「稀発月経」と呼ぶ。この状態が続くと、自然に妊娠するのが難しくなる。ペンステート大学医学部のリーグロ教授は、2001年の論文で「高プロラクチン血症の女性の80~90%が、ドパミン作動薬を服用すると排卵が再開する」と指摘している。 実際に、Redditの内分泌学コミュニティでは、こうした声が寄せられている。「3か月間、カベルゴリンを服用したら、18か月ぶりに月経が戻った」「治療を始めて4か月で自然妊娠できた」。不妊の原因がプロラクチンの過剰分泌だった場合、薬を飲むだけで妊娠の可能性がぐっと高まる。だから、不妊で悩んでいる女性は、プロラクチン値をチェックすることがとても重要だ。
治療は薬が基本。選ぶのは「カベルゴリン」
乳汁分泌や不妊の治療の中心は、ドパミン作動薬だ。この薬は、脳のドパミン受容体を刺激して、下垂体からのプロラクチン分泌を抑える。2024年第四四半期の米国市場データによると、この薬の65%が「カベルゴリン(ドスチネックス)」だ。 なぜカベルゴリンが選ばれるのか? まず、飲みやすさ。1回0.25~1mgを週に2回だけ飲めばいい。対して、昔から使われていた「ブロモクリプチン」は、1日1~3回、毎日飲まなければならない。副作用も少ない。ブロモクリプチンでは、吐き気やめまいが25~30%の人に起こるが、カベルゴリンでは10~15%にとどまる。臨床試験では、カベルゴリンで3か月以内にプロラクチン値が正常化した患者は83%、ブロモクリプチンでは76%だった。 ただし、カベルゴリンは値段が高い。1か月分で300~400ドル(約4万5000~6万円)かかる。ブロモクリプチンは50~100ドル(約7000~1万5000円)で済む。でも、副作用が少なければ、長期的に見れば生活の質は上がる。また、カベルゴリンは2025年1月、FDAから「週に1回だけ飲める長時間放出型」が承認された。これで、さらに飲みやすくなる見込みだ。 プロラクチノーマがある場合、カベルゴリンで腫瘍のサイズが小さくなることも多い。微小腫瘍では、6か月以内に90%が完全に消える。でも、腫瘍が大きかったり、薬が効かなかったりする場合は、手術や放射線治療も検討する。治療で注意すべきこと
薬を飲み始めて、最初の数週間は吐き気やめまい、頭痛が出ることがある。特にブロモクリプチンでは、夜寝る前に飲むことで副作用を軽減できる。カベルゴリンは、食事と一緒に飲むと吐き気が減る。 大きなリスクは、高用量での心臓弁の異常だ。1年以上にわたって1日2mg以上を飲み続けると、リスクが高まる。しかし、乳汁分泌や不妊の治療では、通常0.5mg~1mg/週程度で十分。この用量では、心臓への影響はほとんど報告されていない。FDAも2023年に、標準用量では安全であると確認している。 薬をやめると、プロラクチン値が再び上がる可能性がある。だから、症状がよくなっても、勝手に中止しない。医師と相談して、徐々に減らす必要がある。
診断は、まず血液検査と薬の見直し
乳汁分泌が気になったら、まずやるべきことは、血液検査だ。プロラクチン値、甲状腺機能(TSH)、腎臓機能をチェックする。甲状腺の機能が低下していると、プロラクチンも上がるから、両方を同時に見る必要がある。 次に、飲んでいる薬を見直す。抗うつ薬、胃薬、降圧薬、抗精神病薬のどれかが原因ではないか? セトロプラミンをやめて、ブプロピオンに変えるだけで、乳汁分泌が止まったという症例もある。 乳房の触診も重要だ。片方だけの分泌、血が混じった分泌、しこりがあれば、乳腺超音波やマンモグラフィーでがんを除外する。乳汁分泌の35%は原因不明だが、その中でも、30%は12か月以内に自然に治る。だから、すぐに薬を始める必要はない。検査を重ねて、原因を特定するプロセスが大切だ。未来の治療:個別化医療へ
今後、プロラクチン障害の治療は、さらに進化する。2025年の内分泌学会の会議で、パメラ・バー博士は「2027年までに、ドパミン受容体の遺伝子変異を調べて、どの薬がその人に合うかを予測する時代が来る」と語った。つまり、同じ高プロラクチン血症でも、人によって薬の反応が違う。それを遺伝子で予測し、最適な薬を選ぶ。 また、2026年秋には、プロラクチンの受容体に直接作用する新薬の臨床試験が終わる予定だ。これは、ドパミン作動薬とは違うメカニズムで働く。副作用が少なく、薬をやめても再発しにくい可能性がある。 現在、メイヨークリニックでは、内分泌科と乳腺外科が連携した「統合診療クリニック」を2024年から導入。診断にかかる時間が、平均8.2週間から3.5週間に短縮された。患者の負担が減り、治療の質も上がっている。まとめ:乳汁が出たら、慌てず検査を
乳汁分泌は、怖い症状ではない。でも、放っておくと不妊や、重大な病気のサインを見逃す可能性がある。まずは、血液検査でプロラクチン値を確認しよう。薬の見直しも忘れずに。原因が分かれば、治療は意外とシンプル。カベルゴリンのような薬で、ほとんどの人が症状を改善できる。そして、不妊で悩んでいるなら、この検査は、妊娠への第一歩かもしれない。 多くの患者が「薬を飲み始めて、3か月で乳汁が止まり、月経も戻った」と語る。それは、ホルモンが正常に働き始めた証拠だ。あなたの体は、まだちゃんと働いている。ただ、ちょっとしたバランスの乱れがあるだけ。それを整えるのが、現代医学の力だ。
4 コメント
HIROMI MIZUNO
1月 31, 2026 AT 22:59 午後
乳汁が出たってだけで慌てないで!プロラクチン高めでも、薬の副作用やストレスで一時的に上がる場合、めっちゃ多いよ。まずは血液検査と薬の見直し。私も去年、ゾロフト飲んでた頃、同じ症状でパニックになったけど、薬変更したら3週間で止まった。安心して!
ちゃんと検査すれば、大抵は治るからね!
Mariko Yoshimoto
2月 1, 2026 AT 04:39 午前
…えっと、プロラクチン…って、下垂体のホルモンですよね??あの、私、カベルゴリンって薬、知ってるんですけど、アメリカの製薬会社のやつですよね??日本では、まだ保険適用が限定的なんじゃないですか??でも、まあ、アメリカの医療が優れてるってのは、もう、常識ですよね??
晶 洪
2月 1, 2026 AT 16:32 午後
薬を飲めば治る?そんな甘い話があるか。体の不調は、心の乱れが原因だ。ストレスを減らすのが先。
naotaka ikeda
2月 3, 2026 AT 06:56 午前
プロラクチンの検査、病院で受けたことありますか?採血の時間帯や前日の睡眠、ストレスで値が大きく変わるって、医者も言ってました。一回の検査で判断しない方がいいです。再検査は必須。
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